行くしかないじゃん

ただの日記

ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?を観た話

感想のつもりで書いてたけど感想じゃないかもしれない。

「本人ではない」舞台だった。
舞台に立ち、演技をしている以上、たとえ当て書きであっても本人ではないし、それをわかって舞台を観に行って、ああやっぱり本人ではないと安心した。その一方で、どうしても本人を重ねてしまう場面もたくさんあって、なんだかとっても不思議な気分だった。

高校生4人組が、交通事故にあって死んでしまうところから物語は始まる。大の仲良しの4人。ダンス部の大会の決勝が明日に迫り、高揚感の真っ只中。そんなときに死んでしまう。シオリ、アヤカ、レニはそのあと生まれ変わったけれど、カナコは自分が死んだことにも気付かずにいたため、まだ天国を彷徨っていた。「生まれ変わると前世の記憶を無くしてしまう」そんなの嘘だ!と、カナコは時空の鍵で、生まれ変わった3人のところへ。三者三様の生活を送っていた彼女たちだったが、カナコに触発されて、決勝で踊るはずだった曲やダンスを思い出す。そして4人は、ひょんなことからアイドルグループとして活動を始める――そんな一幕。そして、アイドルとして活動しながら、この世界や、自分たちについて考える二幕。

登場人物は名前も似てるし(千田カナコさんには笑った)、性格もどことなく本人を意識しているのがすごくわかる。だけど、本人じゃない。性格も、似てる部分はあるけれど、本人ではない。夏菜子推しなので夏菜子を中心に見ていたんだけれど、夏菜子とカナコじゃ表情が全然違った。もちろん喋り方も、動き方も。結構、アイドルを演じている時が、違いが顕著で。夏菜子だったらそこはそういうふうには歌わないなあとか、踊りも違うし、歌ってるときの表情もそうではないなって思った。夏菜子の歌はこう!ダンスはこう!って思ってると、カナコ全然違うじゃん!ってなると思う。アイドルパートになったときに、失礼ながら、ももクロのライブみたいになるのかなって思ったから、これもお芝居だってことに気付いて、もう最高だなってなった。きちんと、最初から最後までお芝居だった。
私はよく2.5次元舞台を見に行くけど、演じているキャラクターと、演者さんご本人、そのいわば「二人」の重なりにエモさを感じたりしてしまうんだけど、その点で言ったら今回の舞台は本当にエモさの塊だった。
もちろんももクロを知らなくても、話として成立しているしおもしろいと思うんだけど、すこし知ってたらもっとおもしろいんじゃないかなって思うし、私の感じるエモさもわかってもらえるんじゃないかなっておもう。
アイドルになるっていうところ、ももクロにそっくりだった。もちろん細かいところは全然違う(ミュではオーディションだったけど、ももクロはオーディションじゃないとか、そういうの)けど、最初合格者がたくさんいて、9人?とかでグループを作ったときに、あ、もしかしてって思った。それから卒業とか、そういうことが起きて、これはももクロを踏襲しているんだなって思った。
今回のミュージカル、パラレルワールドっていうのが一つのキーワードだったけれど、このミュージカル自体がまるでももクロのひとつのパラレルワールドのようで、そうやって現実と重なる部分があるとまたそこをエモく感じてしまう。

最初に卒業するって言いだした子に対してカナコが言った言葉がすごく印象的で。「それが正解!」って言ったの。辞める子に対して。あなたはあなたのやりたいことをやる。それが正解。私たちは踊りたいからアイドルをやる。こんなニュアンスのことを言っていて、私はこのセリフがとても胸に刺さった。これは脚本に書かれているセリフにすぎなくて、彼女たちの本心とは言い切れないとわかっているけれど、今のももクロを肯定するような言葉だなって思った。彼女たちが「やりたくて」やっているということに、救われた。たぶん、1月からずっと、どこかでひっかかっていたんだと思う。「やりたいからやる」。これ以上にシンプルで安心できる動機がある?使命感じゃなくて、自分の意志で「アイドル」のフィールドに立ち続けてくれているんだって、なんか、いいなあって思った。

この辺からじわじわ気付きはじめる、アンサンブルのアイドルの子のなかにいる、「似てる」子。6人にまで減った(余談だけれど、全員のことを笑顔で送りだしているのがほんとうによかった)ときに、あれ、なんか背格好がめちゃくちゃあかりんに似てる子いるな?ってことはももかもいるな?って。ピンキーを歌った時に、今はあーりんが歌っている「アカリ」「モモカのパートで彼女たちが歌を被せたときに、うわーまじだ!と思った。ていうかあかりんの子(あかりんではない)めちゃくちゃあかりんっぽくて本当にびっくりした。ももかの子(ももかではない)の子のことは、あまり見れなかったんだけど(かなこちゃんばっかりみててごめん)一緒に行った子が、ももかにそっくりだった、ダンスとかすごい似てたって言ってたから、そうなんだとおもう。すごいなあ。
その子たちも自分のやりたいことをやるために卒業して、とうとう四人になって。そして、ドーム公演が決まる。この子たちも最初は路上から始めていて、一日三公演とかやってたりして、そして、ドーム。ももクロじゃんって思うよね?ここで、シオリが言う「うまくいきすぎている」って。怒涛のスピードでドームまできたHEAVEN(※このアイドルグループの名前)。うまくいきすぎていたのは、これがカナコの夢だから。カナコの願望に、メンバー脱退という試練を足されたのが、この世界だった。パラレルワールドのような、夢のような、そんな世界(余談だけど、この辺全部「カナコ馬鹿だから」で片付いてしまうあたり、夏菜子ちゃん…笑となった)。言わば幻想の世界で「うまくいきすぎている」HEAVEN。でも現実はどうだろう。わたしたちが目にしてきたももいろクローバーおよびももいろクローバーZはその「うまくいきすぎている」世界とほぼ同じようなことをこの10年でやってきた。ももクロすごい!って言いたいわけじゃなくて、演劇という一種の「嘘(フィクション)」として描かれると、より現実を意識するというか、改めて、本当にこの10年が「あった」んだなって思った。わたし自身がリアルタイムで知っているのはそのうち半分にも満たない期間だけど、まるで追体験をしているような、そんな気持ち。

でも、この世界はカナコで成り立っているから、カナコの魂の消耗が激しい。もうそろそろ限界だ、あなたが消えれば他の3人はどうなる?と天国の人(覚えてなくてごめんなさい…ミーニャか!)に言われても、カナコはまだ、もうすこし、とアイドルを続ける。4人で踊りたいから。ずっとずっと4人で。
カナコがミーニャにお願いをするシーンがある。ずっとこのままでいさせてって。ここのカナコちゃんがすごくよくて。にこにこしていたとこからすとんと表情が落ちて、ミーニャに願う。息を飲んだ。こんなにすっと変われるんだって。
「ずっとこのまま」というのは、ももクロの願いでもあるのかもしれない。長くやっていきたい、女性アイドルグループは長くやっていくのが難しいのかもしれないけれど、って、ずっと言ってた。メンバーが結婚したり、出産したりしつつも、おばあちゃんになっても、って。それはファンの願いでもあるのかもしれない。ただ、ミュージカルには終わりが来る。カナコの世界にも終わりがやってくる。「生まれ変わったらみんなのことを忘れちゃうんでしょう?」でも、どこかで覚えている、きっと繋がっている。ここらへんのセリフ忘れちゃったけどこんな感じだったと思う。
そうして生まれ変わった世界。お互いを知らない世界。でも、カナコはなにかに気付いて、三人に声をかける。

そして、幕が下りる。

ミュージカルに終わりはあるけれど、現実はまだ終わっていない。カナコの世界は終わったけれど、ももクロという夢のような現実はまだ終わっていない。なにかしらの終わりはあるのかもしれない。もしかしたら、もう続けたくないって思うことがあるかもしれないし、ほかのどうにもできない理由で辞めざるを得ないこともあるかもしれないし、寿命だってあるし。でも、まだ続いている。夢でもパラレルワールドでもない現実は、ここにある。
なんだか、なんだろう。絶対に解散とか嫌だけど、それでも、もしこういうことがあったとしても、なんか、希望があるっていうか……終わりじゃないよって、言ってくれたような気がする。うまく言えないんだけど。


アイドルになってからのことばかり話してしまったけど、もちろん一幕も見どころ満載で。
カナコが他の三人のところに順番に行くんだけど、それぞれ悩みを抱えていて。
シオリはずっと「良い子」で生きてきて、結婚を前にそれでいいのかなって悩んでいた。ここの!しおりんのウエディングドレス姿は必見です。しおりん本当にスタイルがいいから衣装どれも素敵だったけど、ウエディングドレスは本当によかった。そこに来るカナコですよ。ももたまいは結婚式を挙げているので(語弊のある言い方かもしれないけど)、ももたまい好きとしては結構わくわくする展開で。カナコのことを覚えていないシオリは動揺するんだけど、ダンスをやろうっていうカナコに、シオリは、親が嫌いだからやらない、これから結婚もするんだから、って追い払おうとする。そこでカナコが言うんだよね。そんなお行儀よくないでしょみたいなことを。そして、「全然似合わないよ」って。ウエディングドレス全然似合わないよって!そんなことしおりんに言えるのこの世界に夏菜子ちゃんしかいなくない?あまりにやばすぎた。しおりんが歌う仏桑花よかったな。しおりん、こういう役似合うなあ。
アヤカ、幕が上がる大好きノフの心を掴みに来た。ももクロは数年前に『幕が上がる』という、高校演劇部を描いた映画と舞台をやっているのだけど、そのなかであーりんが演じた役と、もう同じって言ってもいいんじゃない?っていう役で出てきた。演劇部の部長。『幕が上がる』ではあーりんの演じた役は他の四人より一学年年下で、だから、他の四人が卒業したあととかなのかなって、思うじゃん。そうだったんだよね。アヤカがぼそっと「さおりさん(夏菜子が『幕が~』で演じた役)」って言った時に幕が上がるじゃん!って。寄せてるだけかと思ったらそのものじゃんって。もちろん『幕が上がる』ではあーりんはアヤカという役ではなかったのでパラレルワールドなんだけどね。そのアヤカに「青春譜」(『幕が上がる』の主題歌)を歌わせたのも、ほんっとに、制作陣はももクロのことよくわかってるなあって思いました。
レニは看護師さん。自分に自信がなくて、他の人の何倍も努力しないとって思ってる。あとすっごいお人好し。めっちゃれにちゃんっぽいなって思った。れにちゃんではないけど、れにちゃんのそういうところを際立たせた役っていうか。
みんなどことなく似ていて、でも違う人。似てるからなのかはわからないけど、お芝居がすごく自然だなって思った。どこか忘れちゃったんだけど、あーりんの喋り方があまりにもナチュラルで驚いた。

ダンスが一番だった頃と違って、3人には別の大切なものができていた。当たり前だよね、違う人間として違う友人や仲間と生きてきたんだから。だから、3人は元の世界に帰る。彼女たちら彼女たちの「ダンス」、大切なものだったり夢だったり絆だったり生きがいだったり、そういうのを見つけたんだ。それを一切否定しないカナコが、脚本が、演出が、すごいなって思った。なんてあったかい話なんだろう。こうやって書くとカナコがめちゃくちゃ物分かりがいいみたいだけど、たぶん違くて、なんていうのかな…あまりにも純粋。本当にやりたいことをやるのが幸せなんだって思ってるのかなあ。仲間のことが本当に大好きだから、尊重してるのかなあ。優しい子だなって思った。



ミュージカルだけれど、曲は全部ももクロの曲を使っている(今回初披露のものも含む)から、全部知っている曲なんだけど、それでも驚きがたくさんだった。アレンジがすごく良くて!このアレンジの怪盗少女がわたしはすごくすきです。音源欲しいくらい。
それに、違う人が歌うとこうなるんだって発見もあって。天国の人(?)として出演されていたシルビアさんと妃海さん、めっちゃ歌がうまい……。多分2曲目?とかで初めてお二人の歌を聴くことになるんだけど、本当にすごくて、こんな力強いサラバ!ももクロとは違った魅力があって、聴き入っちゃった。それに、二幕の黒い週末。かっこよかった。そのお二人とももクロでかけあいみたいに交互に歌うところがあったんだけど、シルビアさんの力強さにももクロがひっぱってもらってるなって思った(もちろんミュージカル上の演出だろうが)。こんな雄々しい黒い週末!かっこいい!一方でHAPPY Re:BIRTHDAYなんかはとても穏やかで優しくて、泣いちゃった。
妃海さん、お局様な役柄のシルビアさんの横で、わたわたってかんじの役ですごくかわいらしかった~。でも歌うとめちゃくちゃかっこいい!!すごい!ってなった。

なんか、ももクロの曲って、生まれ変わるとか、輪廻転生とかそういうのが多くて、ていうか人間の一生をテーマにアルバムを作るようなグループだし、このミュージカルにマッチした曲がすごく多いなって思った。ここは脚本家の方の手腕でもあると思うけど。WE ARE BORNから始まり、HAPPY Re:BIRTHDAYで終わる…。使用される曲は前もって発表されてたから知っていたけど、うわここでこれくる!?みたいな。LOST CHILDとか結構ぞくっとした。聞くのも久しぶりだったし笑。


なんか真面目に書こうと思ったけど、とりあえず簡単な言葉でまとめると、
あーほんとによかったな!!
曲もよかった!!
白い衣装がめちゃくちゃいい!!
泣いた!!
って感じです。


みんなの初ミュージカルのお仕事がこれでよかったなあって思いました。
あとあわよくば他の劇団とかの舞台に出てほしいなって思った。もっといろんなのを見てみたいし、1人でぽっと他の人(ももクロではないという意味)のなかに飛び込んだらどんな演技をするのかな、どんな表情が見れるのかな。あの人の演出の舞台に出てくれないかなーとかぼんやり考えちゃう

みんな歌に自信が無いのはインタビューとか読んでてひしひしと伝わってくるけど、もっと自信を持っていいと思った!


ちなみにわたしのおすすめポイントは、カナコが「アヤカ!」と呼ぶところが見られるとこ。普段絶対呼ばないから、すっごい新鮮だった。役名が同じだと、こういうのがおもしろかったりするよね。

とりあえずおわり