行くしかないじゃん

ただの日記

だから、願い続けよう。

『モマの火星探検記』という舞台作品について、話をします。

舞台って、お金がかかるし、時間も拘束されるし、映画と違って食べたり飲んだりもできないし、おもしろくなかった時のダメージが大きすぎて、あんまり人に勧めるということをしないんです。だって、他人と私じゃ物語の受け取り方も違うし、私がおもしろいと思ったものを他人もおもしろいと思うなんて、いったいどうして確信ができるだろうって。

でも、それでも、この舞台のことが私は大好きだから、初めて人に勧めた舞台でもあります。
 
本当は、あらすじとか言って、こういうところが良いんだよ!ってお勧めしたいんだけれど、何がいいのか?どんなところを勧めたいのか?って考えると、いやでも人によって感じるものは違うし…となってしまう。
「感じることが違う」ということに関しては、今までの人生とか経験とか、何に価値を見出し何を大切にしてきたか、人によってそれぞれなわけだから、当たり前だと思っていて。だからこそ、今、この作品を見て、何を感じるのか。それが今の自分の指標にもなるのかなと思います。
現に私が、2年前は全く理解ができなかったとある登場人物の気持ちが、今回驚く程すっと心に沁みたから。この2年間で、私自身が変わったとは思わないけれど、たくさんのものに触れて、いろんな価値観を知って、吸収できたのかなと思う。
 
モマは、繋がりの物語。
家族、友人、仕事の仲間、たくさんの生き物、そして宇宙。
なんだろうな、その物語に、なんだか救われてしまう。
「終わり」じゃないということに。
死んだ人に会いたいとか、二度と会えない人に会いたいとか、そういうはっきりした気持ちが私にあるわけじゃない。けれども、どこか孤独を感じるこの現代社会で、繋がっているんだ!と心強く伝えてくれることが、とても頼もしくて、勇気をもらえる。
「僕達は、この広大な宇宙に一人ぼっちじゃない」
ユーリにそう言われたら、本当にそうなんだって思える。それくらい真っ直ぐで純粋な思いが、わたしには伝わってくる。ユーリというひとりの少女の願いと、生駒里奈さんのエネルギーが合わさって、客席に飛んでくる。
 
 
とまあうまいこと言いたいけどうまいこと言えない文章を書いてしまいましたが。
純粋にオススメできるのが、出演されている役者さんのファンの方々。あるいは、ちょっと気になってるんだよなーって方々。どの役者さんも本当に素晴らしいし、彼らの良さを引き出すようなキャラクターたちだと思います。みんな、心根が優しいんだよね。わたしも、ちょっと気になってるんだよなで前回のモマの上映会に行って、この作品のことが好きになったので。ちなみに、当時ちょっと気になってた役者さんは今回も出演されていたし、前回も今回もとんでもない役を素晴らしく演じてくださっています。すごい。
個人的に、これは!と思ったのがホルスト役の鎌苅健太さん。前回も別の役で出演されていました。
ホルストは宇宙飛行士であり、小さな息子を持つ父親。中盤の彼と息子の話は、涙なしでは見れなかった。子供を愛するひとりの父親の顔をしていた。それがあまりに暖かくて、優しくて。カーテンコールまで、ずっと、ずっと。
兄貴肌の宇宙飛行士の顔も、父親の顔も、どちらも好きだった。なんだろうな、うまく言えないんだけれど、ホルストとジュピターが手を繋いで微笑み合ってる。それだけで、心があたたかくなる。中盤ももちろんなんだけど、モマに「よかったですね」って言われる終盤のシーンが、とても美しい。
 
最後に、印象に残ったシーンやセリフを箇条書きで。
・オープニング。ほんとにわくわくします。曲が好きだし、よくよく見てると、これから描かれるいろんな繋がりが見える。
・モマとホルストの会話のあとのタケミツ船長の「受け入れろ。考えることなく、ただ受け入れろ。」ほんとに難しいことだけど、大事だなと思って。ばかになれって言ってるんじゃなくて、目の前の事象を、ただ受け入れる。日常において、でも、とか、だって、とか、起きたことに対していちいち考えすぎているのかもしれないな、とわたしは思った。そのまま受け入れることの、難しさよ。それを伝えてくれる船長の、船長らしさ。感服。
・「必ず帰るから。待ってて。」そんなこと言わないでよと思ってしまうけれど、宇宙飛行士はとことん楽天的だから、と序盤で言っていたから、説得力があるというか。本当にそう思っているから、そう言ったんだ。そのあとの「いってらっしゃい」も好き。
 
 
 
また劇場で会えますように。

 

http://www.shachu.com/moma2020/